音楽活動を投げ銭で成り立たせるには

参考URL
『音楽を愛する全ての方へ。オープンド・アーティスト・システム(OAS)』

はじめに
メリディアンローグというバンドが音楽業界に対して新しいビジネスモデルを提案しているようだ。仕組みはファンクラブのメンバーにメルマガで定期的に新曲を無料配信して、「プレミアム・サポーター」と呼ばれる有料メンバーにはCDやDVD、限定ライブなどの特典を用意する形になる。目標はアーティストがそれだけで生活できるようにするということらしい。今回はこのようなビジネスモデルが必要な背景と普及させる上での問題点を考える。

何故音楽が売れないか
ニコニコ動画で好きな音楽を見つけたら、ニコサウンドへ行ってMP3をダウンロード、手持ちの携帯プレーヤーに入れれば無料で好きな音楽が好きなだけ楽しめる。例え合法ルートで音源を手に入れるとしても、単価が安いiTunesやCDレンタルを選ぶ人は多いだろう。顧客の立場としては最低の代価で最高の商品やサービスを得ようとするのは当たり前だ。今の音楽の相場は1曲100円とか200円らしいが、そのぐらいの価値を5~6分の音楽に詰め込むことは恐らくプロでも難しい。聞き手の価値観がすでにここ数年で麻痺、或いは崩壊しているからだ。音楽に限らずあらゆるデジタルコンテンツは無料で手に入るべきと考えている人は少なくない。そこにはクリエイターが創作をするために保障されるべき活動費用はあまり考慮されないのが現実だろう。創作活動に専念できずに明日の飯代を心配するくらいなら、音楽活動なんて趣味に留めてしまったほうが良いと思うのは当然である。

海外のユーザー援助型ビジネスモデル
ArtistShareというサイトが2003年から始まっている。

このサイトではユーザーが直接アーティストの活動費用を援助することで、創作サイクルを成り立たせている。レコーディングやCDのプレス費用などをユーザーがスポンサーするわけだが、相当大きな規模で行われている。参加者には楽曲の創作プロセスを閲覧できる仕組みが用意されていて、より高額な援助を行うと、エクセクティブプロデューサーとしてレコーディングスタジオに立ち会いする権利を得ることもできるという。寄付のページを見てみると数十万円単位での援助のオプションが用意されていて、それができない人には普通にCDを買ったりダウンロード購入するという手段も残されている。

http://www.artistshare.com/projects/project_experience.aspx?projectID=141&artistID=1

ようするにコンセプトはパトロンなのだろう。プロジェクトをまるごとスポンサーするなど、一部のお金持ちにしかできない芸当だが、そういうレベルのことが淡々と行われている。投げ銭文化が根付いていない日本で同等のことを行うのは恐らく難しいだろう。これでは数百〜数千人の娯楽を1人のお金持ちがスポンサーする、いわゆる「パーティーの食べ物は全部無料だよね」という構図になってしまう。日本で似たようなことをやるなら、もう少し薄く広く負担できるモデルにしないと成り立たない。

何にお金を払うのか
上で紹介したようなモデルで、数十万〜数百万円を投じてアーティストをサポートしている人達は何にお金を払っているのか。創作プロセスを見る権利やレコーディングの立ち会いは、おそらく単なるおまけで、本当の意味で対価が支払われているのはそのプロセスから出来上がった作品だろう。この人達が「新曲を聞きたい」と純粋に思っているからこそ成り立つビジネスモデルである。寄付しなければ新曲は生まれないし、アーティストは活動を中止してしまうかもしれない。例えれば鶏に餌を与えなければ卵を産まないし、いずれ死んでしまう。あなたが卵だけ食べて「頑張れ〜」という応援をしても鶏は卵を産まない。鶏は餌をくれる人に付いていく。今のネット界では音楽クリエイターは「楽曲を聞いてもらえるだけで嬉しいはずだ」という思考で染まっている。でもクリエイターのほとんどは楽曲を聞いてもらうよりも「音楽活動を続けていける環境を持つ」ことを望んでいるはずだ。もっと作品を作って発表したいと思っているだろう。作り手はロボットではないから、創作に集中するには水も食糧も必要だし、寝泊りする場所も必要だ。趣味でやってるとしてもそれは本業で稼いでるお金を創作活動に回している「セルフパトロン状態」であって、それが当たり前になると中間マージンを削ることばかりを考えるようになり、全体的なクオリティが「節約」という名の元に犠牲になる。「新曲を生みたい」という思いは、クリエイターもそのファンも一致しているはずである。だったらまずクリエイターをセルフパトロンをやめさせることだ。新しいビジネスモデルを提案するとしても、聞き手が意識改革を行わなければ成り立つわけがない。

オープンド・アーティスト・システム(OAS)の問題点
メリディアンローグの提案は有料会員のみで音楽の創作プロセス(ボーカル収録、アレンジ、ミックス、マスタリング、CDジャケットデザイン、CDプレス、etc)を支えるという趣旨だが、本当に実現可能なのだろうか。先に述べたように楽曲のクオリティが落ちる可能性もあるし、それでファンが離れていったら本末転倒なのではないか。ライブのグッズ販売を収益源にしているので、ボカロPのようなDTMメインのクリエイターには導入できない部分も多い。メルマガというやり方も正直疑問だ。有料メルマガならまだ解るが、無料で配るだけならメールマガジンに拘る必要はない。これなら無料配信をする代わりにライブのチケット代をいくらか上げるだけでもいいのではないか。とりあえずこのOASを導入しようとしているクリエイターは既存のファンを失うリスクも考えなければならない。導入するのは当の本人達が試行錯誤してからでも遅くはないということだ。この提案には実績データが不足し過ぎている。

オーダーメイドモデルとの連動
活動の費用を賄うというのなら素直に楽曲制作の依頼を引き受けるほうがよっぽど現実的かもしれない。同人音楽の歌い手や作曲家のほとんどが何かしらの形で依頼を引き受けている。エロゲーの主題歌だったり、東方アレンジの仕事も多いかもしれないが、自分の作業に対する対価が保障されているならば、自分の作品を出す時のようなリスクを心配をする必要が無い。サポーターモデルを本気で成り立たせようと思うのなら、サポーターになってくれた人限定のオリジナル曲をプレゼントしたり、オーダーメイドの依頼を請け負ったりするくらいのことをしないと、まともな額は集まらないだろう。

最後に
日本の場合欧米と違ってお客様意識というものが強いため、お金を払うとしたら必ず何か対価を得なければ気が済まない人が多い。有料会員制を試みるのは良いが、それ単独で活動全体を支えられるほど世の中は甘くない。金を払った人に正当な対価を用意することをまず考えなければならない。

関連URL

ボカロ文化においての原曲へのリスペクトについて

はじめに

参考リンク

とあるボカロPさんの発言がTwitter上で問題視されているようです。

なんとも悲しいのが、歌ってみた界隈からしょっちゅう炎上に結びつけかねないような火種が出てくること。
それがあまりにも多すぎる上に、見てる自分からしても腹立たしい事ばかりなのです。
彼らの言葉を借りれば、
「ボカロが栄えているのは歌ってみたのおかげ!もっと歌い手に感謝するべき!」
「ボカロ曲は人が歌って初めて完成すると思っている」
「ボカロPは歌い手のための曲の下請け工場」
「歌ってみた拒否るPとかいたら潰すから教えれ」
などなどということらしいんですよね。

アホかと。

作曲者から「お願いします」と頭を下げるのは、「歌ってもらう」場合です。
こちらが「この曲にはこの人の声が欲しい!」と思って、作曲者から依頼する場合です。
どっかの誰かが勝手に歌って、それが人気になったところで、「はあ、ありがとうございます」と棒読みで言うぐらいしかこっちにはできません。
しかもそれも、ちゃんとした歌唱力で歌っているならまだしも、明らかに音痴だったり、
曲を殺すようなアレンジをしたり、そんな歌声にまで感謝しろと言われても困る話です。
むしろ「消せ」と言いたいぐらいのところを抑えることもあることです。
Ohnuma Sound Lab. blog  年の瀬・歌い手・ボカロ界隈・これからの活動 より引用

その後この方は自身の発言に対して謝罪をしています。

前回の日記で、

『しかもそれも、ちゃんとした歌唱力で歌っているならまだしも、明らかに音痴だったり、曲を殺すようなアレンジをしたり、そんな歌声にまで感謝しろと言われても困る話です。
むしろ「消せ」と言いたいぐらいのところを抑えることもあることです。』

という書き込みをしております。
これに関して、「音痴であること」と「曲を殺すアレンジをしたこと」を同列に扱ってしまった事に関して、お詫びいたします。申し訳ありませんでした。
音程が外れている、というのは、生ボーカルにはありがちなことです。そして人によっては、かなり音程が外れてしまう事もありえます。そういった不可抗力(もちろん、何度も歌唱の練習をしたりする事で改善する事もあるとは思いますが)に近い事と、意図的にアレンジをすることを同列に扱ってはいけない事です。
また、この書き方では本来曲を殺すアレンジに対しての言葉である「消せ」というのが、音痴であることに対してもかぶってしまいます。
本当に申し訳ありませんでした。
【追記1】前回の日記についての補足・お詫び・コメント返信などから引用

今回はボカロ文化や歌ってみた文化においてのリスペクトについて考えたいと思います。

楽曲の利用規約について
そもそも楽曲が歌われるには原曲のカラオケが公開されているのが前提なわけで、ボカロPは「歌ってみた」がOKならばオケを公開し、ダメだったら公開しません。ですのでオケが公開されているということは、作曲者の同意を得てその楽曲は素材としてニコニコ動画のユーザーに提供されているわけです。作者自身のポリシーなどがあるのであれば、その素材の利用規約を用意してルールを厳守してもらうというのが一般的だと思います。

ただ、その利用規約というのは万人共通ではないのです。人によっては歌詞の改変を禁止していたりしますが、なんでもありという方もいます。営利目的での利用か否かによっても変わってくることもあります。イラストの世界においては、例えばピアプロでは絵を借りる際にイラストをどの程度改変して良いのか明記されていたりします。ピアプロのサイトの機能でその辺りの意思表示が簡単になっていますね。しかし、仮に利用規約に則っていても、作品というのは作者の意図しない使われ方をされてしまう場合があります。

楽曲へのリスペクトについて
ニコニコ動画の場合作品は知名度によって価値が判断されている側面があります。その知名度を悪用する人もいます。人気な楽曲の歌詞を変更してそれを政治への批判に、或いは特定の個人に対しての誹謗中傷のために使う人もいたりします。それでは作品へのリスペクトが仮にあったとしても(好きだからその曲を選んでいるのかもしれませんし)、作者にはその思いは伝わらないと思います。

また、仮に作品の改変を行っていない場合でも、ブームに便乗する目的で楽曲が使われると、作者や原曲のファンに不快感を与える可能性があります。同人で東方プロジェクトという作品がありますが、そのブームに乗ってお金目的でアレンジCDを出している人達がいたりするわけです。これを原作(元はゲーム)へのリスペクトが足りないと指摘する人もいます。ニコニコ動画の場合お金目的で便乗することはあまり無いのかもしれませんが、売名目的で人気の曲を選曲して唄われる歌い手さんは多いのではないでしょうか。知名度を上げるために、再生数を稼ぐために作品が利用されているのであれば、そこに原曲へのリスペクトはあるのでしょうか。個人的な意見ですが、有名になるために他者の作品を利用するのは、お金儲けのために人気作品に便乗する同人界に存在する性質とさほど変わりは無いと思います。同人では原作の知名度によって同人誌の売り上げが左右されたりするわけですが、「歌ってみた」の場合では原曲の知名度で再生数が左右されている側面があります。そして知名度というのはお金に換算することができます。それはニコニコ動画のニコニ広告という機能が証明しているでしょう。そこでいくら「原曲を宣伝してあげてるんだから感謝しな」と言っても、それは同人文化においての「原作を宣伝してあげてるんだから感謝しな」という言い分とまったく同じだと思います。

「おんぶにだっこ」はボカロPも同じ
今回の件で一部のボカロPが歌い手を敵視する流れになっているのであれば、考え方をもっと柔軟にするべきだと思います。仮に過度な権利の行使を行ってしまうとそれはボーカロイドの文化を壊すことになるからです。初音ミクに「おんぶにだっこ」してもらっている立場なのだから、その分ボカロ界に恩返しするのが筋なのではないでしょうか。「歌ってみた」という文化はボーカロイドの発展においてとても重要な役割を果たしていると思うのです。その手段として、自身のボカロ曲の権利関係を緩くするというのは有りだと思います。クリプトンだって、本来主張できるはずのキャラクターの権利をできる限りオープンにしているじゃないですか。その恩を忘れてはならないと思います。仮に初音ミクが実在するとして「疲れたからここからは自分で歩いて」と言われたらどうします?そうしたら初音ミクというプラットフォームとネームバリューを利用して集客することはできないし、CDのパッケージに客引きになるボーカロイドのイラストも使ってはいけない。作品を聞いてもらうために、自分自身のブランドを確立して勝負していかなければならない(今のsupercellさんのように)。ヒャダインさんの例を見ても、プロデュースというのは無名のアーティストにヒット曲を提供して有名にさせて初めて「わしが育てた」と言えるものなのではないでしょうか?

――そんな経験を経て作曲されたのが、倖田來未×misonoのシングル「It's all Love!」(エイベックス・エンタテインメント)、東方神起のシングル「Share The World」(同)。2009年4月のチャートでいずれも1位を記録しました。そのときはどんな気分でしたか?

前 何とも言えない気分でしたね。東方神起はアニメ『ONE PIECE』(フジテレビ系)のオープニング曲で毎週放送されて、倖田來未×misonoも姉妹の初のコラボ曲として話題になり、ワイドショーでも取り上げてもらいました。もちろんうれしかったんですけど、あれはアーティストの力であって、自分の力ではないと思うんです。それよりは、1st、2ndシングルが売れなかった麻生夏子が、僕が参加させてもらった3rdシングル「Perfect-area complete!」(ランティス)で18位だった時の方が手ごたえを感じましたね。
AKB48、ももクロ......ヒャダイン/前山田健一が語るニコ動&アイドル曲方法論(前編) から引用

最後に
ボカロPは自分の作品を素材としてニコニコ動画のユーザーに提供するのであれば、どのような利用のされ方を想定しているのかの明確な線引きを行うべきです。そして、仮にその線を越えてしまった二次創作があったとしても、そこに愛があるのであればそれを認める心の広さが求められていると思います。歌い手の方は他人の著作物を利用するのであれば、仮に作者が明確な利用規約を設けていなくても、良識の範囲での利用を心がけるべきであると思います。

関連リンク

無料コンテンツがもたらす崩壊

はじめに

ドワンゴの川上会長のエントリーが最近話題になっている。コンテンツの価格に関しての議論の中で、無料が当たり前になることについて徹底的に批判している。ちなみに自分はどっちサイドの人間かというと、おそらく川上氏サイドの意見を持っている。それを前提にこのエントリーでは、無料コンテンツがどのようなものを壊しているか例を挙げながら説明しよう。

ボカロ界の最大の問題はお金
自分はボーカロイドでの作曲活動をしているため、他のクリエイターとのやり取りもしている。その中で、私のほうが色々質問をするのだが、とあるクリエイターの発言が印象に残っている。内容としては「商品化するのであれば追加コンテンツを収録しなければ買ってくれる人に申し訳ないし、ニコニコ動画にアップされているものだけで構成されているものには商品価値はない」という類のことを言っていた。これはつまり言い換えれば「ニコニコ動画に作品をアップすることではその作品の商品価値は上がらない」、「無料で聞けるものだけでは売る価値がない」ということである。

ボカロコンテンツの商品化の過程で、正式な契約に至らずにコンテンツだけ奪われて発売されるというのは、以前ドワンゴの着うた事件であったことだが、初音ミクのCD・DVD・ゲームなどで企業がクリエイターに対してちゃんと契約をして印税を払っているかどうかは疑わしい。なぜなら圧倒的にクリエイターのほうが不利だからだ。企業対個人という関係で公平に交渉できるほど世の中甘くない。クリエイターは交渉のプロではないため、企業側はそこに付け込んでくるのが現状なのではないか。クリエイター達はボカロ文化への影響を懸念して問題を表に出すことはないかもしれないが、ファンの見えないところで「お金」は確実に問題になっている。あなたが持っているそのボカロCD、印税がちゃんとボカロPに渡っていると断言できるだろうか?仮に渡っているとしても、それは本当に適正価格なのだろうか。


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そもそもクリエイターが事務所に所属していれば、間に誰か入って交渉するので、ギャラの値段に関してもダンピング状態になる心配もないかもしれない。しかし現状ではボカロPのほとんどはネット上で個人として動いている。そのため、悪質な業者の標的になりやすいのだ。これは、PIXIVの絵師にも同じことが言える。そしてこの問題の根本にあるのが「コンテンツの無料公開」である。クリエイターはニコニコ動画やPIXIVなどのタダ見が大前提の場所で創作活動をしている。そこから経由してくる仕事の単価が安いのは、まぁ必然だろう。特に個人のクライアントの場合、コンテンツの無料公開を引き合いに出して安く値段交渉してくることも珍しくない。「ネット上での無料公開を想定していますので安くしてください、できれば無償でお願いします」よくあることだ。私のほうにも先日作曲依頼が一件あったのだが、作曲ができないけど誕生日にオリジナル曲を贈りたいから1曲無償でお願いします、という内容だった。失礼かもしれないが、なぜ私が見ず知らずの方への誕生日プレゼントを作らなければならないのだ。それは間接的にプレゼントに掛かる費用と時間を私が負担することになるのではないか。この依頼に関してはどう返答すればいいか困るし、それだけでも大切な時間が奪われる。それもこれもネット上の無料公開が当たり前になっているから、ユーザーの感覚が麻痺して、他人に無償労働を要求するような非常識な行動を起こすのではないだろうか。楽曲を制作するために必要な対価というものの感覚がなく、新曲やイラストは放っておけば溢れ出てくるものだと勘違いしているユーザーが多いのではないか…といえば失言になるかもしれない。1曲作るのに何万円も費やしている立場から言えば、もう少し現場のことを勉強してほしい。こういうユーザーには制作費という概念自体が存在しないわけだし、そういう人たちに音楽を売るなんて相当難しいと思った。

コンテンツが人質に捕られている
ボーカロイドの話から離れて商業コンテンツに話題を変えてみよう。自社の製品が違法に複製製造されて巷にばら撒かれるということがあれば、それはその会社にとって大打撃になる。当たり前のことだ。コンビニの外でコカコーラが山積みになっていて、看板に「無料です、ご自由にどうぞ」と書いてあったら、あなたはコンビニに入って飲み物を買うだろうか?ちなみにこの場合コカコーラだけではなく他の飲料の売り上げにも影響がある。もちろん安全性を考慮してお好みの飲料をちゃんと正規購入する人もいるだろう。しかし、コンビニの外でコーラ飲み放題という状況は、集客効果はあるかもしれないが、店にとっては営業妨害以外の何物でもないはずである。店側の私有地なのだから、そのコーラの山を撤去する権限もある。しかし、客からは「何故コーラを撤去する」と抗議が…来るはずがない。現実世界では大抵の人は常識を持っている。それが異常な光景であることも知っているはずである。しかしネットでは、違法でアップされているものが権利者に削除されると、ユーザーから抗議が来るというではないか。いかに無料公開がユーザーの感覚を麻痺させ、当たり前に機能するべきシステムを機能させなくしているかということだ。


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自社のコンテンツが違法で出回っている場合の対処方法は主に二つだ。(1)そのコンテンツを削除する、(2)独自にコンテンツを無料配信する。両方が実行されることもあるし、どちらかのみを実行する企業もいる。(1)をせずに、そのコンテンツに広告を付けて収益を上げるというのは角川等がYouTubeで取り組んでいる。しかし今の時代、企業にとって客は神様でもあり、最大の敵にもなり得る。正規購入したユーザーがそのコンテンツを違法放流することも考えてビジネスモデルを構築していかなければならない。だからといって(2)がその答えであるかは疑問に思う。無料公開を防ぐには自社で無料配信するのが一番かもしれないが、それは同時に自社の商品の価格をゼロにすることを意味する。それでビジネスができるような仕組みを考えることが出来るのならそれでもいいが、できないなら安易にFREEという流行りに流されることはしてはならない。今の時代、ユーザーの価値観が企業利益に直結しているといえる。だとしたらまず教育を視野に入れて動くべきだ。

コンテンツが有料であればユーザーは「一度も確認したことないものにお金が払えるわけがない」と言い、企業にコンテンツの無料公開を要求する。公開されなければ違法で視聴することもある。そしていざ無料公開すると「なんで無料で見れるものにお金を払わなければならないの?」と言ってくる。ユーザーは基本的にわがままなのだ。


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このような考え方をするのはユーザーがネット上でのマナーや価値観についての知識しっかり身に付けていないからではないか。今学校でどういう教育が行われているのかは詳しく知らないが、やっていたとして、そのやり方は正しいものなのか正直疑問に思う。個人的には、著作権の大切さを教えるのであれば企業が学校側と提携するべきである。実際に学生に物作りをさせて仮想ネットショップでコンテンツを販売し、学生同士が互いの商品を仮想ポイントで購入したりするだけでも、ネット上のコンテンツに対しての意識は大きく変わるはずだ。彼ら彼女らは未来の顧客なのだから、今のうちに正しい価値観を植え付けておかないと将来的により多くの産業が崩壊する。偽物バッグを買うのが当たり前のアジアの一部国々と、本物に拘る日本とで異なるのは取り締まり体制と価値観の違いだ。それだけでビジネスモデルが成り立つかどうかが決まる。

学校ではないが、実際私自身は作曲活動を始めた当初、楽曲制作費は1曲辺り3000〜5000円で十分だと思っていた。しかし、これを時給換算すると国が定めた最低賃金を余裕で下回る。私は依頼をすることで初めて相場を知り、適正価格をクリエイターに支払うようになった。今では私がアレンジャーなどに支払う金額は上記のそれより一桁多い。私が言いたいのは、ユーザーはクリエイターの立場に一度なってみないと考え方を変えないだろうということだ。あと、若者を相手にネットでビジネスをしたいのなら、学生にウェブマネーの買い方を動画で教えるくらいのこともしないといけない。じゃないと彼らは永遠に乞食メンタリティーのままになってしまう。

最後に
コンテンツの無料化はユーザーの意識を根本から変えてしまう。無料が当たり前になるほど脅威と呼べるものはない。これからの時代はネットでいかにユーザーにお金を払わせることができるかが鍵になってくる。ネットは販促専門、利益はリアルという考え方でいると、ITの発展の意味がない。ネットでお金を動かすこと、それを当たり前にすることでユーザーの意識も変わり、次第に皆ネット上でお金を使うことに抵抗がなくなってくるのではないか、私はそう考える。そしてネットという新しいプラットフォームにはそれに適した新しい売り方を見つけることが必要である。それがコンテンツ産業の崩壊を食い止める唯一の手段だ。


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論理的なアイディアって何?

はじめに
大事なお知らせがあります。当ブログはこれまで主にニコニコ動画向けの新サービスなどを提案してきましたが、自分は今年6月に就職が決まり、今日正式に内定書を受け取りました。なので今後は自分の会社のためにアイディアを発案しなければならなくなりました。勿論ニコニコ動画でしか成り立たない事業の提案だったり、私の単なる妄言や考察に関してはこのブログで引き続き書くかと思います。ただそれ以外の主力的な具体案は、おそらく自分の会社で提案すれば自分自身が開発に参加できる可能性が高いので、ネット上には公表しません。ドワンゴは今年の2月頃に受けたのですが、一次試験のSPIで落っこちました。馬鹿ですみません。

当ブログのタイトルは「論理的なアイディアはまだかい」という喧嘩を売っているようなタイトルですが、私自身は、それなりに面白いアイディアが世に広まっていってくれたらいいなと思ってこのブログを書き始めました。その中でニコニコ動画の運営さんはユーザーの意見を良く聴くみたいだったので、当ブログのトピックも一気にそっちに傾きました。本当はもっと色々な分野のアイディアも考えてます。例えば音楽の分野だったらシングルCDの余っているディスクスペースをデータトラックにして、その中にそのレコード会社の他のアーティストのCMを沢山入れてプロモーションに活用するとか。金になるかどうかはともかく、常に世の中「こういうのあったら良いのにな」っていうのはよく考えています。でもその分野のお偉い方々の頭が固いと、書くだけ無駄かなって思います。どうせ書いても「フフン」と鼻で笑われて妄言扱いされるんだろ、と思ってしまうわけです。でもドワンゴニワンゴ?はどんなにブクマ登録数が少ない案もちゃんと参考にしてくれた。だから書き手のモチベーションも上がったんです。今後自分はもう全力でニコニコ動画にアイディアをぶつけることはできなくなりますが、今のニコニコ動画なら今後も大丈夫だ、問題ない。

論理的なアイディアとは何か?多分普通だったら色々データに基づいて裏付けられたものを指すのかもしれません。でも自分の中では、「論理的」というのは「合理的」という解釈のほうが強いので、人を納得させることのできるアイディアがそれなんだと思っています。「これ面白い」とか、「たしかにそれなら実現可能かも」といった具合に。納得してしまえば多少飛躍的な考え方で語っても目を瞑ってくれます。だから当ブログの記事は無駄に長いんです。読み手を説得しているんですから。その過程で読み手が疲れないように毎回写真やイラストを挿入しています。こういう小細工もアイディアのプレゼンには必要だと思ってます。ツイッターで一言つぶやいて議論の中で何かが具体化されるのも良いかもしれませんが、自分の場合頭の中で考えていることを全て吐き出すにはやはりブログが適しています。狭いスペースで人を説得できるような文章力を自分は持ち合わせていません。そういう意味でもこのブログは続けていきます。ただ、仕事の関係で自分が良いと思っている案が公表できなくなるのは少し残念に思います。

ということで、せっかくなので今まで提案してきたアイディアをいくつか紹介したいと思います。記事のブックマークコメントもそのままです。初期にいくほど文章の書き方がおかしかったりしますが、よかったら読んでみてください(ここから口調が変わります)。


1.アニメの映画館上映
2007-10-29 アニメはテレビで流すべきじゃない、映画館で上映すべきだ
ようするに映画館でアニメを流すことでコピーをなくしてお金を払った人だけが観れる形式にするべきという案。テレビ放送は映画館で放映された後でもいい、とにかく客が有料でしかその作品を観れない時期を一定期間設けることで、一定の収益を上げることが狙いだ。ニコニコ動画が当時違法アニメの無法地帯だった頃に、アニメ産業の低迷が問題視されており、自分なりの結論がこれだった。ブックマークコメントを見れば分かるが、やはりハードルが高いという問題が指摘された。気軽にアニメを観れないのはいかがなものかということだ。私は初めて書いた記事でそういうコメントをもらって、かなりへこみ、自分自身のアイディアに自信を持つことができなくなった。すぐさま代案としてゲームセンターでアニメを流す案を出した。

しかしどうだろう、近年のアニメ映画の上映方式に変化は無かっただろうか?今までは劇場版として書き下ろされたものが上映されていたのに対し、最近はテレビやネットで放送した作品が手直しされ、総集編として映画公開されているケースが増えている。有名なアニメでは「マクロスF」、ニコニコ動画で公開されていたアニメでは「イヴの時間」などが、劇場公開されている。こういう方式のメリットとしては、初見の人もそのアニメのファンの人も楽しめるところだろう。一度無料で観たものをお金を払って劇場で観るという、新しいビジネスモデルが出来上がっているのではないかと思う。すでに知名度のある作品の場合、私が提案したテレビ放送前の劇場公開も無理な話ではない気もする。少なくともアニメの映画館上映は定着しつつある。
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2.ニコニコポイント・投げ銭
2008-02-27 ニコニコ動画の新機能候補「ニコニコポイント」を考える
2008-08-09 ニコニコ動画の新機能候補「ニコニコポイント」が実現した件
ウェブ上のクリエイターの作品公開を大道芸に例えて、投げ銭ができるようにしたらどうかという案。投げ銭自体は結局実現しなかったが、ニコニコポイントというウェブ通貨が実現し、クリエイターにモチベーションを還元する「ニコニ広告」というサービスが開始された。タグ別にポイントを割り振るという案は投げ銭の提案の過程で2008年の8月に出してある。


3.ニコニコ動画内の素材サイト
2008-03-06 ニコニコ動画の新サービス「ニコニコ素材」を提案する
ニコニコポイントと同時期に、「ニコニコ素材(仮)」というサービスを提案した。これはニワンゴが運営しているサービス「ニコニコ動画」において、企業、団体、そして個人が無償の素材を提供し、ユーザーが自由にそれらを投稿動画に使用できるサービスとして提案した。ブックマークがあまり伸びなかったので、わざわざニコニコ動画開発陣の鈴木慎之介氏に直接メールで問い合わせて提案した。このサービスはおそらくニコニコ動画にとってある種の意思表示になった。大会議で発表されたと同時に、MAD削除宣言が有り、そこからニコニコ動画はより健全な方向へ歩み始めた。


4.ライブイベントの事業化
2008-12-13 ニコニコ動画主催の大型イベント「ニコニコフェスタ」を考える
ニコニコフェスタはニコニコ動画が主催する即売会とコンサート、そしてその他イベントを融合させた大規模イベントとして提案した。ようするにライブイベントの収益化を目的としている。内容としては、現在の音楽コンサートに偏ったニコニコ大会議よりもかなり先を見越している。踊ってみたや生主の祭典を運営は計画しているらしいが、全てのイベントをまとめたほうが効率が良いと思うからこその提案だ。


5.ニコニコマップ
2009-05-02 ニコニコ動画の新機能候補「ニコニコマップ」を考える
ニコニコマップとは、ニコニコ動画のサイト上で観覧できる共有地図で、ユーザーは地図上に表示されている地点に対してコメントすることが可能。更に、ニコニコモバイルではGPS機能を利用して、現地にいる人間は周りの景色を携帯電話のカメラを通してコメントがオーバーレイした形で見れるという仕組みを持つサービスとして提案した。このサービスはセカイカメラほどの制度も必要なく、動画や広告とも連動しやすい側面がある。技術的な部分では相当大規模なプロジェクトになると思うが、なんとか実現して欲しいサービスである。

この地図やコメントはニコニコモバイルでも専用のアプリを使って観覧可能で、そのアプリにはGPSモードといって、自分が現在いる場所についてのコメントをカメラを通して実際の景色と照らし合わせて観ることができる。

最後に
今後もあまりにも規模のでかいアイディアや、就職した会社では実現できそうにないアイディアは今後も公表していきます。ただし当ブログの案を採用される場合は、全てのリスクをそちらで負担していただきます。失敗しても当ブログでは一切責任を負いませんのでご了承ください。

ニコニコ動画の海外向け新サービスを考える

はじめに
少し前にひろゆき氏はニコニコ動画の機能追加に関してはやり尽くした感があると述べられていました。しかし今後の世界展開を考えるのであれば、海外向けのサービスや機能というのは今から議論していく必要があると思います。おそらく今のニコニコ動画をそのまま海外に移しても成功しないと思います。この記事では海外向けの新たな機能やサービスを考えてみたいと思います。

1.ニコニコフォーラム
海外では日本で主流になっているBBSのような掲示板は定着していません。アバターやスマイリーが使えるフォーラム型の掲示板が主流です。ログインは当たり前、メンバー同士でプライベートメッセージをする機能も備わっています。ニコニコ動画に海外の人を集客させたいのであれば、まずはフォーラム型掲示板を導入することです。そこでユーザーは面白い動画を発見したり、友達を探したり、新しい企画を立てたり、自由に行動することができるようになります。今のニコニコ動画のように、ユーザー同士のやり取りが動画のコメント上でしかできないというのは、海外ユーザーにとっては魅力的ではないと思います。ユーザーの安全性を考えてプライベートメッセージ機能は無しにするにしても、コミュニケーションをする場所は絶対必要です。少なくとも広告だらけになっている今の海外の掲示板ではユーザーは集まらないと思います。


crunchyrollのフォーラム


Anime News Networkのフォーラムスレッド一覧

Anime News Networkのスレッド


2.字幕機能
海外のユーザーに日本語の動画を楽しんでもらう、或いは逆に日本のユーザーに海外の動画を楽しんでもらうには、字幕があったほうが良いと思います。コメントとは別レイヤーの字幕専用の編集機能が必要だと思います。

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3.リージョンフィルター
ニコニコ動画には膨大な数のコンテンツが存在します。ただ、それを海外のユーザーが観るだけというのは面白くない。ユーザーが自分で作った動画をアップして認知してもらえるようにするには、日本から投稿された動画を一旦全てフィルターアウトできる仕組みが必要だと思います。そうすると各国のユーザーが投稿した動画のみが残り、それぞれの国のページによってまったく違う動画がフィーチャーされることになりますね。ようするに例えばニコニコ動画(フランス)に行くとデフォルトでフランスの投稿者の動画のみが表示され、オプションで日本の動画も表示できるようにするということです。

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4.日本語講座カテゴリー
海外のユーザーがより日本のコンテンツを楽しむためには日本語を学ぶのが一番です。そこで日本語学習専用のカテゴリーを設けることで、ユーザー同士で面白おかしく学んでいくことが可能だと思います。日本のユーザーも積極的に参加していくことで、海外交流の場としても機能するのではないかと思っています。

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5.インターナショナルオーダーメイド
日本の場合クリエイターにユーザーがイラストや楽曲の制作を依頼することはそのクリエイターの公式サイトに行けば可能ですが、海外のユーザーは日本語ができない場合が多く、依頼をしようにもできなかったりします。また、支払いの面でも海外からの送金はPAYPALが主流になっているので、PAYPALを導入していない日本のクリエイターにとってはインターナショナルな活動は敷居が高いはずです。そこで、ニコニコ動画が海外のクライアントと日本のクリエイターの仲介役となり、メール文の翻訳から支払いまでをサポートするサービスを立ち上げます。日本のクリエイターは英語ができなくても世界中からお仕事の依頼を受け付けることが可能になり、ギャランティに関してもニコニコ動画経由で一括して振り込まれるので手数料などによるロスが少なくなります。勿論その分ニコニコ動画側がサービス料を取っても良いと思います。

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最後に
今のニコニコ動画のままでは海外のユーザーは乗っかることが難しいはずです。溢れるような日本のコンテンツに圧倒されてしまっているのが現状だと思います。海外に展開するのであれば、日本のコンテンツを押し付けるのではなく、海外のユーザーが白紙の状態から作り上げていける、まったく別のニコニコ動画を用意する必要があると思います。その上で海外では当たり前になっているフォーラムなどのネットの仕組みを取り入れ、上手くいくのであれば日本のニコニコ動画にも導入していくと良いのではないでしょうか。

音楽クリエイターが対価を得る方法

はじめに
ロックな大会議から一夜明け、ニコニコ動画が原宿バージョンにリニューアルしました。ニコニコ動画の新機能としてiTunes Music Storeの商品が貼れるようになりましたね。これによってニコニコ動画にいる音楽クリエイターは作品をより効果的に宣伝し、正当な対価を得ながら活動できるようになるといいなと期待しております。この記事ではネット上で音楽クリエイターが活動費用を得る方法を今更ですが考えてみたいと思います。


1.iTunesなどの音楽配信サイトで楽曲を販売する
メジャーのアーティストの作品も販売している配信サイトへ楽曲を登録するにはかなりの手間が掛かるらしいです。ですので、インディーズや同人のレベルで登録する場合は代行会社に任せるのがデフォなようです。現在色々な登録代行会社がありますが、適当に選ぶとぼったくられる危険性が高いので、しっかりリサーチしてから登録されることをお勧めします。自分が調べてみた所、とりあえずこの二つのサービスの会社は信頼できると思いましたので紹介させて頂きます。

monstar.fm
自社で音楽配信サービスを展開しているmonstar.fmのオプションサービスです。海外の配信サイトに一括登録できます。おそらく値段はかなり良心的だと思います。

http://monstar.fm/world/

RouteR
初音ミクを生んだクリプトン・フューチャー・メディア社による登録代行サービスです。クリプトン社のボーカロイドを使用した楽曲で、タイトルやジャケットイラストにボーカロイドキャラクターを連想させる要素がある場合は、キャラクターの著作権の関係上RouteRでの登録が推奨されていません。使用する場合はピアプロリンクの登録が必要だそうです。
http://blog.piapro.jp/2010/05/routervocaloid.html

http://router.fm/pricing/

ちょっと前に自分の作品をiTunesに登録してみました。上記の二つとは別のサービス(海外)を使っていますが;

http://itunes.apple.com/jp/album/you-alone/id369594094
でもなんでだろう、ニコニコ市場で検索しても出ないのだが;


2.CDを販売する
コンパクトディスクと呼ばれるメディアに音楽を収録し、パッケージングして店頭で売る方法です。この辺は規模によってCDの制作方法が変わってくると思いますので説明は割愛させて頂きます。


3.依頼を受ける
歌に自信があるならボーカル、トラックメイキングに自信があるなら作曲や編曲などのお仕事をネット上で募集することができるでしょう。お仕事の種類はレコード会社からのオファーだったり、個人からのオーダーメイドの依頼など様々だと思います。ただ、今の日本のネット上には営業活動が安全且つスムーズに行えるポータルサイトのようなものはほとんど存在しません。ですので基本的に自分自身のサイトやブログを用意して、そこ経由で依頼してもらう方法が主流です。ニコニコ動画での人気を生かすのであれば、自分のマイリストに自分のメールアドレスを記載しておくという方法があると思います。安全性を考慮すると、クリエイターの検索から課金まで一括して行える場所が存在する必要性を感じます。


4.楽曲の権利を売る
自分が作成した楽曲ファイルの権利を他者に販売することで対価を得ることができます。権利の種類としてはその楽曲の販売権だったり、ライブでの演奏権だったり、カラオケトラックの使用権など様々です。これらは自分の楽曲をJASRAC等に登録していない場合、作者自身が管理しなければならない部分ですね。自分の場合はEryps.netという楽曲制作サイトを立ち上げ、オプションとして自分の作品のカラオケの権利を色々な方にレンタルしております。営利目的で楽曲を使用する際には、予め使用料を頂く仕組みになっております。おそらくジングルやBGMなどの素材販売もこの部類に入りますね。


5.ライブ
楽曲はプロモーションと割り切って、代わりにライブで稼ぐというのを最近よく聞きます。最近ではインターネット上のライブというのにも可能性が広がってきているので、ライブがクリエイターにとって更に重要になっていくものだと理解しています。Ustreamの有料放送にも期待です。


6.その他
カラオケ、ファンクラブ、グッズ、他にも沢山手段はありますね、しかし、どれも安定してクリエイターの活動を支えられる手段だとは思いません。CDをトレーディングカードのように売ったり、握手の権利を付加したり、売ろうと思えばコピーできないおまけをCDにくっつけてやればいいという考え方は、正直言って音楽業界の発展には繋がらないと思います。


これからのビジネスモデル
CDのセールスが低迷しているこの時代に、あんなにも長く続いたCD販売というビジネスモデルに取って代わる手段を見つけるなんて、全世界の人々の頭脳を駆使しても無理なのかもしれません。しかし現実としてCDのモデルが崩壊している以上、クリエイターがまずアイディアを出して試さないといけない。そういう時代だと思います。

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個人的にはネットの時代においては以下の条件を前提にしたビジネスモデルを作ってほしいです。

  1. 作品がフル&無料で聞ける
  2. より質の高いバージョンは気軽に買える
  3. 良いクリエイターが見つかりやすい
  4. 作者に直接寄付ができる
  5. 作品を使うとクリエイターに対価が支払われる
  6. クリエイターが特定のソフトやジャンルに依存する必要が無い

自分はニコニコ動画に上記の条件を満たす環境を作りあげる力があると思っています。今後どうなっていくか楽しみですが、今はクリエイター自身が考えて行動しなければいけない時期だと思います。

ニコニコ動画発の音楽の魅力について

はじめに
商業音楽、同人音楽、アマチュア音楽などがニコニコ動画では違法なものも合法なものも含め自由に聞けるようになっていますが、今回は「ニコニコ動画発」と呼ばれる部類の楽曲が勢力としてかなりの影響力を持っていることについて考えてみたいと思います。そういう楽曲を買ってしまう心理などについても、どういった考えをユーザーが持っているのか考えてみたいと思います。

Twitterでのkawangoさんの発言に関しては正直あまり興味ないのですが、色々話題になっているようなので一応引用しておきますね。詳しい流れはtogetterのまとめページを読んでみてください。

ニコニコ動画で音楽をきくユーザは23.9%。youtubeの半分しかないというのは浅い理解で、ニコ動には商業音楽は削除されるのでほぼ存在しない。ネットユーザの4分の1はインディーズにもなってない素人の音楽を聴いているということだ。若年層に絞るともっと割合は多いだろう。2010-05-28 04:04:06 via web
ニコ動ユーザのテレビ離れがじわじわきてる件 - Togetter

んー、ちょっと何言ってるか解らないですね。


ニコニコ動画発の音楽の魅力1:作者がユーザー
ニコニコ動画が胸を張って「ワシが育てた」と言い張れる音楽のジャンルがあるとすれば、それはボーカロイド曲だと思います。東方は元々同人音楽から来ているし、ニコニコが無かったら広がらなかったと確実に言えるのはYAMAHAVOCALOIDというソフトウェアを使用した楽曲達でしょう。

このジャンルの音楽の作者のほとんどが一般人です。聞く側は必然的に友達感覚で作者に接することができる。作者もユーザーとの仲間意識の元「こんなのどうよ」といった要領で作品を発表することができる。それが盛り上がった原因の一つだと思います。商業音楽の場合クリエイターとリスナーはビジネスという壁によって限りなく遠い距離感を持つことになるのに対して、ボーカロイドの文化の中ではクリエイターとリスナーは限りなく近い距離感を維持できる。連絡しようとすれば直接連絡もできる。ブログにコメントすると返してくれたりする。そういう親近感がコミュニティの発展に貢献したと思います。

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ニコニコ動画発の音楽の魅力2:無料+合法
今までユーザーは音楽を聞くためにある程度お金を掛けていたかもしれない。でもインターネットの発展によりMP3という手軽なファイル形式で音楽がやり取りできるようになった。2000年頃には日本にも商業音楽が直ダウンロードできるサイトが沢山ありました。その後色々なソフトウェアやサイトが生まれては消えていきました。さかのぼるとこんな感じですかね:Napster、Audiogalaxy、KazaaYouTubeWinny、Torrent。一度無料という甘い蜜を覚えたユーザーは、そう簡単に有料には戻れない。感覚が麻痺してしまったユーザーが沢山いる中で、いくら権利者がその違法性を叫んでもコピーは止まらなかった。それでもユーザーも多少は罪悪感を持った上でダウンロードしていたはず。できれば無料且つ合法が良い。それは誰もが求めていた形でした。

そしてボーカロイド曲にはそれがあった。罪悪感無しで思う存分聞ける。それは価格の「フリー」とは別の「フリー」という開放感をユーザーに与えたはずです。

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ニコニコ動画発の音楽の魅力3:CDを記念に手元に置きたくなる
ボーカロイド曲を収録したCDが売れるのは、例えるなら友達がCDを出したら記念に買うといった具合に、所持すること自体に意味があるからだと思います。それがインターネットを通じて大規模で起きている。勿論買う側は収録曲を気に入ってるという前提があるけれど、お客様気分で買うものではないという点では商業音楽とかなり購入意識の面で違うと思います。

ちなみに無料で聞けるのにあえて買うということについては、少年ジャンプは立ち読みで済ますけど、単行本は手元に置いておきたいのと同じだと思います。

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商業音楽の活路
ボーカロイドバージョンとカラオケを無料で配れば本家バージョンも多少は売れると思いますよ。

最後に
個人的にはCDはもう時代遅れだと思いますが、フォトアルバム程度の役割は持っているかと思います。ネットの時代にCDを売るのは、CDの時代にレコードを売るようなものです。もはやCDは音楽をPCに移すためのインストールディスクと化しているわけで、それを売ることに拘るのは不毛だと思います。他にビジネスモデルとか思いつかないんですかね?音楽雑誌の付録としてオムニバスCDを付けるとか、個人のクライアントから資金を払ってもらってクライアントの要望通りの曲を製作するとか。いくらでもビジネスモデルって作ることはできるけど、レコード会社ってあくまで従来の方法にしがみ付くのが好きだなぁとたまに思います。

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